ヒーローズ・ジャーニー

「OST(オープン・スペース・テクノロジー)」とは、実行したいアイデア、解決したい課題、探求したいテーマを参加者が提案し、それに賛同する人が集まって話し合うことにより、具体的なプロジェクトを生み出したり、テーマについての理解を深めたりするためのプロセスです。
OSTの場の最大の特徴は、何について話し合うのか、どのように話し合いを進めるのかなどを参加者が自主的に決めて進行することです。

社員が真に取組みたいと考えることを自発的に提案し、それに賛同する社員が集まってチームをつくり、実行することが可能な組織は、VUCAの時代にも競争力を発揮します。それを、どんな組織でも起こりやすくする仕掛け、場づくりがOSTなのです。

ビジネスを取り巻く環境が急激に変化しつつある今、これまでのやり方を見直して業務を変革するイノベーションの必要性が叫ばれています。組織においてイノベーションを起こすためには、異なる視点、立場、組織の人々が自由に意見を交換して、新しい可能性を探求する必要があります。さらに、経営陣や管理職の人だけでなく、全員がリーダーシップを発揮できる環境を整備する必要があります。そこで、組織のすべての人に新しい対応のリーダーシップが求められているのです。

そんな新しいタイプのリーダーを育成するのがOSTなのです。
OSTから生まれる新しいリーダーの特徴は以下のとおりです。

①強い意志と責任を持って参加する
②積極的に一歩前に踏み出す勇気を示す
③権限ではなく、態度と姿勢でリーダーシップを発揮する
④「ディスカション」ではなく「ダイアログ」で合意形成する
⑤メンバーが力を発揮できる環境を整える
⑥リーダーシップを育む場を生み出す

OSTは、参加者がサークルの中央に進み出て、話し合いたいテーマを紙に書いて読み上げることから始まります。
参加者がどんなに多くても、全員でサークルになって座ります。
サークルの真ん中にはA4サイズの白い紙とマーカーが置いてあります。
人数が多くなると、自分からサークルの中心までの距離はとても遠く感じられるものです。
そのような衆目が集まるなかで、立ち上がって歩いていくことはとても勇気のいることです。

OSTではこの行為を「英雄の旅(ヒーローズ・ジャーニー)」と呼んでいます。
自らを鼓舞して一歩前に踏み出す勇気は、OSTが育むリーダーの大きな特徴の一つです。

「共創」の時代、組織目的・行動基準・ルール・風土が大きく異なる組織同士のメンバーが、地域の課題やテーマを共有し新たな価値を創造するプロセスにおいて、未知なる連携に向けて一歩前に踏み出すリーダーと「英雄の旅(ヒーローズ・ジャーニー)」を共に創っていきたいと思います。

■参考図書
『人と組織の「アイデア実行力」を高める OST実践ガイド』(香取一昭+大川 恒著/英治出版)